ライター:張 ケン 監修:AKATSUKI
コラム
Column
斬新なIPとして 注目を集めたオープンワールド型RPG:『原神』
はじめに
情報公開当初から注目を集めていたオープンワールド型RPG『原神』の日本サーバー第1回、中国大陸サーバー第2回のクローズドβテストが開催された。(3月19日から4月13日までの期間)
2020年リリース予定 中国製オープンワールド型RPG『原神』
『原神』とは、中国人気インディーズゲーム会社miHoYo(米哈遊)により独自開発され、2020年にリリース予定のオープンワールド型ロールプレイング・アドベンチャーゲームである。miHoYoのCEO劉偉氏により公開された『原神』に費やされた研究開発費(2020年3月まで)は1億ドル以上だという。
ゲーム『原神』のストーリーは、まず、「炎」「水」「氷」「雷」「風」「草」「岩」という7つの元素が絡み合う幻想世界「テイワット」が存在し、この世界において、神様に選ばれた人々は「神の目」を授与され、元素を操る力を手にすることができる。プレーヤーは「旅行者」として、「テイワット」の世界で自由に旅をし、様々な仲間と出会ったり、一緒に強敵を倒したりする。冒険を体験しながら、仲間と共に元素を司る七柱の神を探し出し、そして、生き別れた兄妹との再会を果たすという物語である。
去年(2019年)6月21日から25日までの期間で、『原神』の中国大陸サーバーにおける第1回のベータテストが開催された。ベータテスト参加の定員1000名に対して、参加者の募集がスタートしてから5時間ほどで、応募人数が20万人を超え、6日間で100万人を超えた。また、今年(2020年)3月19日から4月13日まで(中国サーバーでは、本来4月7日締めであったが、4月13日まで延期)、日本サーバー第1回、中国大陸サーバー第2回のクローズドβテストを開催した。中国大陸における大手ゲームアプリ配信プラットフォームである「TapTap」上の『原神』ゲームコミュニティでは、2020年4月7日時点で、フォロワー数177.1万人、ストーリーズ数が1.2万、閱覧者数が955.9万人というデータが記録されており、『原神』の人気とユーザーの期待度が窺える。
『ゼルダの伝説 BotW』との“類似性”:盗用か?参考か?
2019年6月8日に、『原神』のPV動画が中国大陸で公開された。しかし、発表直後から、任天堂より発売されたNintendo Switch用アクションアドベンチャーゲームである『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下『ゼルダの伝説BotW』と略)』との類似性が騒がれていた。ネット上の糾弾だけでなく、2019年8月に上海で開催された「ChinaJoy」(中国最大のゲーム展示会)の現場では、『ゼルダの伝説BotW』のプレイヤーが『原神』のブースの前に集まり、switchゲーム機本体や『ゼルダの伝説BotW』のゲームソフトを掲げて抗議する事態に発展。これは少し過激な反応に思われるが、ある意味では、現在の多くの中国人ゲーマーの盗用へ対する態度を表している。
だが、『原神』は本当に『ゼルダの伝説BotW』の盗用作品であるのか。一体どの程度の類似性があるのか。ネチズンが『原神』のPV動画及びネット上の第1回のベータテストの動画に基づいて作った『原神』と『ゼルダの伝説BotW』との比較対照画像からみると、覚醒した主人公が高台に駆け寄って世界を眺めるシーンや草が燃えたときの様子、パラセールの使用、一部の敵の形、人物の泳ぎや岩壁を登る挙動など、確かに少なくはない類似点が存在するように感じる。
オフィシャルの対応については、『原神』の開発チームは本作が『ゼルダの伝説BotW』に啓発され、他にも部分的に「GTA」や「ノーティードッグ(Naughty Dog)」の作品を参考にしていると明言している。また、2020年1月14日に、『原神』をNintendo Switchでも発売すると発表している。
しかし、ゲームレビューを見ると、『原神』の独自性も明らかになってくる。例えば、瞬時に操作キャラクターを切り替えたり、元素属性を利用し攻撃したりする「多彩な戦闘が楽しめる」点、「海灯祭」等のベータテスト中にも大規模な期間限定イベントが開催された点、「オンラインゲームのシステムで作られたレベル制を重視する」点、またオリジナルの可愛いアニメ風キャラクターデザインなど、『原神』独自の持ち味も確実に存在する。
また、次回(2020年)のクローズドβテスト版作品が前回2019試遊版より、初始動画の削り改め、パラセールを翼に取り換え、違う形態の敵キャラクターの増加、探索できる地域を「璃月港」まで拡大など、様々なアップデートや変更も見られている。
実は、2017年に任天堂が日本国内最大のゲーム開発者向け技術交流会である「CEDEC」に参加した際、「ゲーム開発シーンにおける知見の共有」という意思を持ち、『ゼルダの伝説BotW』の設計のコツをシェアしている。ゲームライターの渋谷宣亮氏によると、過去「DARK SOULS」からソウルライクが生まれたように、「もしかしたら『BotW系』がゲームジャンルのひとつになるかもしれない」と指摘した。
miHoYo:「技術オタクが世界を救う!」オリジナルIP作り、ゲームからの展開
miHoYoはアニメーション文化を愛するIT分野を専攻していた3人の上海交通大学大学院生によって起業された。会社スローガンは「技術オタクが世界を救う!」である。本社は2012年に上海で設立され、業務内容は主に国産アニメ文化においてのスマートフォンゲーム、漫画などの領域に集中しており、オリジナルIPを育て活かすことでアニメや音楽といったジャンルも手掛けている。
2015年には東京に支社を設立し、事業内容はゲームの企画、開発、運営、自作コンテンツの日本におけるローカライズ、パブリッシング、プロモーション、カスタマーサポートなどを行うなっている。 miHoYoの代表作として日中のゲーマーによく知られているのは、2012年から自社開発及び運営されているスマートフォン向けのソーシャルゲーム『崩壊学園』シリーズである。2016年3月まで、miHoYo社の日本法人で『崩壊学園』の法務・知財を担当する李衡達氏によると、全世界で累計2000万ダウンロードを達成したという。2017年上半期、miHoYoは5.87億元(約97.83億円)の営業収入と4.47億元(約74.5億円)の利益を実現した。『崩壊学園』は、謂わば中国で有名なオリジナルの国産アニメーションIPとしての大成功である。
今後のmiHoYoの位置づけについては、さらに多くのオリジナルIPを作り出し、ゲーム開発に力を注ぎ続け、マンガ、アニメ、音楽、グッズ等のIP活用まで領域を広げ、国産ACGを代表する存在へと成長することである。
終わりに
中国人ゲーマーが『原神』の「類似性」に対して「憤慨」する反応を見せたように、著作権を尊重するという国民意識の高まりが感じられる。これは業界の正常な発展が良い方向に成長している兆しである。
また、今回『原神』が話題となったことやmiHoYoの急速な発展を見るに、中国国産IPの大きな可能性を感じることができる。『原神』の製品版への期待も高まり、これからの新しく生まれるIPにも巨大な価値を感じられる。