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2.2億元(約36.6億円)を投資した中国春節劇場映画「Lost in Russia(囧妈)」が上映前にネット公開?!

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2020年、中国春節期間中の映画が全て(計7部)上映停止?!

2020年1月22日、新型コロナウイルスの感染を予防する為に、淘票票、猫眼などの中国映画チケット購入アプリから、購入済の春節期間中の映画チケットの払い戻しが可能になったと発表された。


翌23日、2020年中国春節期間で上映される予定の計7部の国産劇場映画が次々と一時的に上映中止の発表を行った。ここ数年、「映画を見る」ことは中国人の中でも新年期間中の新たな習慣の一つになっていたことにより、春節期間中の劇場映画に大きな期待が寄せられていた。(2019年、中国映画業界の興行収入は642.66億元(約1.07兆円)。その内、中国国産映画の割合は60%程を占め、約385億元(約6,416億円)となる、その中でも、春節期間中の劇場映画の興行収入は58.4億元(約973億円)を記録している。)特に、2020年に公開が予定されていた7部の春節劇場映画は業界内でも「史上最強」と見なされており、70億元(約1,166億円)の興行収入が予測されていた。


劇場上映中止の「Lost in Russia(囧妈)」がネット公開?!

1月24日、中国春節の前日、「Lost in Russia(囧妈)」とByte Dance(字節跳動)有限会社(TikTok、今日頭条、西瓜ビデオなどの開発をした会社)が共同公告を発表した。発表された内容は、Byte Dance社が6.3億元(約105億円)をかけて、「Lost in Russia(囧妈)」のネット上における放送権を買ったという内容だった。1月25日0時から、ユーザーはByte Dance系のアプリ(TikTok、西瓜ビデオ)を通じて、無料で劇場映画「Lost in Russia(囧妈)」の視聴が可能になった。今回、中国映画業界史上初の劇場映画が劇場上映前に、ネット上で放送されたのである。


劇場映画「Lost in Russia(囧妈)」の無料ネット公開における影響とは?

劇場映画「Lost in Russia(囧妈)」の無料ネット公開の情報が発表された後、世間では大きく分けて2つの声があった。一般の人々にとってはもちろん嬉しい情報であり喜びの声が上がった。もう一方で、映画関連事業者にとっては、今回の事件は中国映画業界のルールを破壊することだという憤りの声だ。1月24日の夜、浙江省映画業界の事業者2万人が共同声明を発表し、「Lost in Russia(囧妈)」のネット公開中止を要求した。そうでなければ、浙江省映画業界は「Lost in Russia(囧妈)」の製作会社である歓喜メディアや監督徐峥(シュ・ヤン)が関係する映画をすべてボイコットするという。その後、各映画館の連名ボイコット文書も中国映画局に届いた。

だが、最終的に、民意を得た「Lost in Russia(囧妈)」は富と地位を得ることとなった。


歓喜メディア社の「陰謀」とは?

「Lost in Russia(囧妈)」の製作会社である歓喜メディア社が発表した公告を詳しく見ると、Byte Dance社との提携はこれからだ。その中で、最も重要なポイントは、歓喜メディア社が開発した「歓喜首映」アプリとByte Dance社が開発した「今日頭条」、「西瓜ビデオ」などのアプリが連携して、劇場映画のネット公開チャンネルを創り、映画の「試写」メディアプラットフォームを創ることだ。


歓喜メディア社が運営するアプリ「歓喜首映」にユーザーを導入する為に、Byte Dance社が運営する「今日頭条」、「西瓜ビデオ」などのアプリ内には、独立した入り口と特別地域を開設することについて契約が交わされた。両社は映画及びコンテンツ産業に基づいて、全面的な連携から展開し、収益を共有する。現在、「歓喜首映」アプリの有料ユーザーは100万人を超えて、営利は黒字を確保している。


Byte Dance社の「陽謀」とは?

Byte Dance社が6.3億元を払って、「Lost in Russia(囧妈)」の一部版権を買った原因は大まかにまとめると、2点あると考えられる。


1点目は、Byte Dance社系のアプリが新規ユーザーを求めることだ。現在、Byte Dance社系のアプリは人気があるが、現存するユーザーの特徴としては、大都市(一線都市と二線都市)の若者(10代ー30代)の利用者が多い。「Lost in Russia(囧妈)」はホームコメディ映画であって、春節期間の家庭での雰囲気に最も相応しい映画だ。Byte Dance社は本映画を通じて、小都市の中高齢者の利用者を増やすことに期待している。


2点目は、Byte Dance社の映画業界及びテレビ業界への参入だ。業界内部の情報によると、Byte Dance社は以前からプロデューサーを募集している。それに、2018年から高評価、高期待の劇場映画の投資にも参加している。例えば、2019年国慶節の愛国映画「私と私の祖国(我和我的祖国)」に投資し、2020年の春節映画「 唐人街探案3」にも投資した。


映画以外に、Byte Dance社はドラマ、アニメなどの動画業界にも参入し始めている。「西瓜ビデオ」はByte Dance社が開発した動画観賞アプリである。現在、「西瓜ビデオ」は多数の90年代と00年代の中国最高水準に位置するドラマのネット上における放送権を買った。他の会員制有料制動画観賞アプリと違って、「西瓜ビデオ」のすべての動画は無料で視聴することができる。


Byte Dance社はドラマと映画以外にも、バライティーや児童アニメにも注目している。2018年、Byte Dance社は40億元(約666億円)を使って、銀河酷娯と一緒にバライティー番組「頭号任務」を製作し、2019年7月から放送を開始した。そして今月から、Youtubeで一番人気の児童アニメ『Masha and The Bear』の中国における放送権を独占した。世界Top100の児童アニメの内90%は「西瓜ビデオ」と連携し、千億以上の放送回数を記録した。


一方、今回Byte Dance社と歓喜メディアの連携は、Byte Dance社にとって、映画産業への参入加速として考えても良いだろう。また、今回の出来事は劇場映画のオンライン上映の革命の第一歩として考えても良いだろう。


※記事内の為替レートは『1円=0.06人民元』で計算されています。

ライター:任杰 監修:AKATSUKI


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