ライター:Jenny 監修:AKATSUKI
コラム
Column
進撃のBilibili:二次元特化からマルチメディアへ
はじめに
8月27日、Bilibiliは2020年4~6月の決算[1]を発表し、売上高が26.2億元(約436.7億円)で同期比約7割の増加、MAUは1.72億PV、DAUは5100万PVに達し、同期比より55%増と52%増を果たした。また、Bilibiliの売上は4四半期連続で60%の増加を果たし、有料VIPユーザーは8ヶ月連続で継続率が8割以上を維持、業界関係者一同が啞然とするデータを残した。更に、Bilibiliユーザーの平均年齢は21歳であり、動画サイトや各アプリサービスにおける最も若いユーザー層を抱えている企業となった。
Bilibiliとは
Bilibiliは、2009年に中国初の二次元コンテンツ専門の弾幕動画サイトAcfanの会員だった徐逸氏(シュー・イー)によって設立された。当時趣味で数人によって設立されたAcfanのサーバーが不安定だった、予備サイトとして「MikuFans」が設立され、2010年に「Bilibili」、中国語名「哔哩哔哩」(ビリビリの音訳)に改名された。ビリビリは人気アニメ『とある科学の超電磁砲』の主人公御坂美琴の愛称から由来である。中国では「B站」(Bステーション)、または「小破站」(ボロステーション、貧乏が自虐ネタとなるから)の愛称で親しまれている」。
2011年、現社長の陳睿(チェン・ルイ)氏は個人名義でBilibiliに投資。技術出の徐逸氏は経営には向いていないという理由から、何度も陳睿氏を勧誘し、2014年に彼を迎えた。陳睿氏が入社後、業務の多様性に力を入れ、アニメ、ゲーム、漫画を中心とするACG関連のほか、ドラマ、映画、ドキュメンタリーなどの一般コンテンツ、生配信、Eコマース、広告などの総合的なエンターテイメント・コンテンツ企業となった。彼の経営によってBilibiliの発展は加速し、2018年にはナスダックでの上場を果たした。
主要事業:ゲーム
決算によれば、ゲームは依然としてBilibiliの主要収入源であり、第2四半期の売上高が12.5億人民元(約208.3億円)を記録し、全体売上の48%を占めている。
2016年、Bilibiliによって発売・運営された「Fate/Grand Order」(下記:FGO)は会社の主要収入源であり、「Bilibiliをナスダックにつれて行った」と言われるほどの出来事である。上場する当時、ゲームの収益が全体の8割以上を占め、「動画サイト」ではなく「ゲーム会社」だと揶揄されることもあった。上場後に、Bilibiliはゲーム以外の分野に更に力を入れ、2020年第1四半期にゲーム以外の事業の収益が始めてゲーム事業を上回った。
2020年4月17日に中国でリリースされた「プリンセスコネクト!Re:Dive」(下記:プリコネ)がFGOに続き、第2四半期において最も多くの収益に貢献した。4月だけでの売上が6億人民元(約100億円)を記録し、発売されて半月でアプリストアのセールスランキング7位にランクインしている。「プリコネ」がリリースされる直前、会社のビルに巨大なQRコードが被せられ、「例の窮屈なBilibiliはやっと会社を売りに出すのか」とSNS上で話題となったが、それはただのPRギミックであり、このアイディアはCEO陳睿氏の理不尽なリクエストから生まれたという経由(CM)が公開され、会社全体の重視度が伺える。
また、Bilibiliは最初に日本の二次元ゲームを中国に輸入した会社であり、FGOの事例など一連の成功は中国の二次元ゲームの市場を開拓し、現在中国では最も大きなゲームジャンルとして発展している。
その後に、TencentやNetEaseを始めとする中国の多くのゲーム会社が二次元ゲームに力を入れているが、ゲーム市場において、Bilibiliの影響は大きい。
近日、Bilibiliは今年全世界で大ヒットしたSteamゲーム「フォールガイズ アルティメット ノックアウト」の中国地域の代理権を獲得し、今後の展開としてモバイル化を発表、更に注目を集め、今後もゲーム事業に積極的に取り組む姿勢を見せた。
独特な事業:UGC
BAT三社と違い、資本不足で「バック」がないBilibiliは最初から版権戦に参戦する実力がなく、また二次元色が強いので、以前はiQIYI、Tencent、Youkuなどの動画サイトからは相手にすらされなかった。今になって考えてみると、Bilibiliにとって窮屈であったはずの過去は動画サイト戦国時代における版権大乱闘を避け、自身の発展に専念できた時期であると言える。そして、PGC(Professional Generated Content)コンテンツに欠けるBilibiliは、UGC(User Generated Content)コンテンツを促進する方針を取り、中国版のYouTubeとも言える発展を見せた。
現在、Bilibiliにとって最も貴重なのは「UP主」と呼ばれるUGCユーザー、つまり(=YouTuberのような存在)である。決算によれば、今年上半期に、UP主の数が急速に増え、前年同期比139%の増加、月間平均投稿動画数が600万を超えた。また、投稿される動画はもちろんだが、動画画面に打ち込まれる弾幕もUGCの重要な一部であり、ある種、最も価値があるものである。弾幕の「二次創作」(ツッコミ、ボケなど)によって、旧作や劣作の「魅力」(ツッコミどころ)が発掘され、「弾幕を見るため」がBilibiliを視聴する決定的なポイントとなっている。
その上、2017年にTwitterのように「動態」(動き)機能が開放され、動画以外にテキストや画像の投稿も可能となったことで動画共有サイトからコミュニティまでに発展した。この独特なコミュニティの雰囲気はBilibiliがBATに匹敵する重要な部分であり、他社が簡単に真似することもできない、ユニークな動画サイトに成長した。
マルチエンターテインメントへ
二次元コンテンツから発足したBilibiliはもちろん、コンテンツに投入する予算はほとんどアニメ関連である。現在Bilibiliは一番多く日本アニメを購入している動画サイトであり、今年夏の『Re:ゼロから始める異世界生活』 第2期、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』などもすでに配信されている。また、Bilibiliは国産アニメにも非常に積極的に取り組んでおり、今年の夏に『百妖譜』、『大理寺日志』、『霊籠』、『元龍』、『凡人修仙伝』、『雾山五行』などをリリース、Tencentの次に国産アニメ事業に積極的に取り組んでいる動画サイトである。
また、以前からBilibiliはアニメのほか、ドキュメンタリー、教育など、大手動画サイトが重視していなかったジャンルの動画にも非常に積極的に取り組んでおり、現在最も多くのドキュメンタリーと教育動画を所持している動画サイトでもある。
そのほか、近年では映画、ドラマ、バラエティなど「王道」の番組も購入し始めた。今回の決算発表の4日後に、Bilibiliは制作会社歓喜伝媒集団(下記歓喜伝媒)との業務提携を発表し、5.13億香港ドル(約71.3億円)を投資し、9.9%の株を獲得している。
歓喜伝媒とは、ベテラン映画監督寧浩、監督兼俳優徐峥などが2015年に設立し、同年香港で上場した映画制作会社であり、2017年に自社の動画サービス「歓喜首映」を提供している。以前にも紹介した今年の春節、コロナの影響により『囧妈』を劇場公開からウェブ公開に転じたことで、大きな話題となった制作会社である。
両社は今後、Bilibiliのサイト内において、歓喜伝媒の専属コーナーを設立し、歓喜伝媒が主導で制作する映画にはBilibiliに優先投資権があるなどの提携内容を発表した。歓喜伝媒との提携によって、Bilibiliは今後映画関連事業にも積極的に取り組む姿勢を見せた。
まとめ
Bilibiliは中国において、唯一無二の動画サイトとして、他の動画サイトとまったく異なる道で国内第4位の動画サイトにまでに成長した。現在、中国において最も多くの若者を抱えているプラットフォームとしては、今後どこまで成長できるのかが非常に期待されている。
また今後もBilibiliの成長を追い紹介していく。