ライター:Jenny 監修:AKATSUKI
コラム
Column
中国大陸の新メジャー 『直播電商』ライブコマースとは?
中国におけるライブコマース市場
2019年11月11日、中国では世界最大のオンライン買い物イベントが開催された。
中国では11月11日は「独身の日」と呼ばれており、同日に世界最大規模のオンライン買い物イベントが開催される。2019年度では、中国最大のネットショッピングサイトアリババの売上が2,680億元(約4.5兆円)を記録し、過去最高となった。また、同社のライブコマースを担当するタオバオライブは、200億元(約3,333億円)の販売を記録し、グループ全体の約7.5%を占める結果を残した。しかし、実際のところ、このようなイベントデー以外でも、タオバオだけの1日のライブ配信数は6万件以上にも登っている。
中国では、ライブコマースを『直播電商』と呼び、2016年はその“元年”にあたる、2019年がブレイクスルーの1年と見られており、2020年のコロナウィルスの影響で、爆発的な注目を集めた。名前の通り、「直播=ライブ配信」と「電商=Eコマース」の組み合わせによって、より多くのアクセス・トラフィック・販売量を得ることを実現させている。ライブコマースは、プラットフォーム(略:PF)の売上を伸ばし、ライブ配信者のマネタイズを実現させ、WIN-WINの関係を築いたため、急速な発展を遂げることができたのである。
統計によると、2019年時点において、中国のライブコマースの市場規模は約4,300億元(約7.2兆円)、であり、4億人が利用している。それゆえ、各EコマースPFや配信PFは積極的にLIVE配信を取り組むようになった。タオバオのような大手ECモールだけでなく、TikTok、kwaiなどのショート動画PFにおいてもライブ配信とライブコマースは組み込まれている。
一方、ライブコマースの成長には『主播』の存在が欠かせない。各ライブコマースPFを合わせて、年間取引額が1億元(約15億円)を超えるライブコマース主播が200人以上おり、業界の成長と拡大に多大な貢献をしている。
ライブコマースにおける『主播』とは
ライブコマースにおいて、配信を仕切る“主播”、つまり生主の腕前と販売力は売上に大きな影響を与える。それゆえ、生主の出場費は驚くほど高く、実績も良い、または芸能人や有名な生主の1回切りの出演料は数十万人民元(百万円超え)に達し、その上に売上のレベニューシェアまであるというケースも存在する。一流になれれば高収入かつ高い人気を誇るため、話題性があり、生主は最近若者の間で人気の職業となった。
現在中国で最も知名度が高い生主は李佳琦(リー・ジャーチー)と薇娅(ウェイヤー)であり、二人のフォロワー数はを合わせると、8000万人を超え、タオバオライブコマースにおいて、二人の売上は全体の5割も占めている。
李佳琦は、口紅販売の『網紅』、つまりネットインフルエンサーから生主に転じた中で最も成功した例となった。男性として、なぜ口紅販の売で業界のトップになったかというと、大学(専攻はダンス)卒業後、彼は地方のデパートで3年間ロレアルのビューティーアドバイザーを務め、とあるイベントでのライブ販売をきっかけに、ライブコマースを始めた。特別な経歴は無いが、365日間で389回のライブ放送を実現し、努力で腕を磨き続けたことで成績はどんどん上がった、15分間に口紅を15000本販売した記録は彼の実績の最たるものである。彼の口癖である「OMG」と「Amazing」は流行語になるほど人気となり、若者によく物まねされるネタとなった。
薇娅はかつて北京の有名な服装卸し市場で衣装の実店舗を経営していた。ところが、Eコマースの急成長に衝撃を受け、彼女は店舗を閉店することを決意し、オンライン店舗の展開に乗り出した。彼女は2016年からタオバオで中継のセールスを開始し、まったくの無経験ながら4ヶ月足らずで1億元(約16.7億円)の売上額を突破した。彼女のライブの最高視聴者数は4300万人を超え、最高売上は30億元(約500億円)超、最高単品の売上は1.6億元(約26.7億円)に達した。今年の4月1日に、彼女はライブで小型ロケットの販売を開始し、エイプリルフールのジョークかと思いきや、4千万元(約6.7億円)のロケットは2時間で完売となった。
コロナウィルスによる、ライブコマースの発展促進
2020年、中国ではコロナウィルスの防疫体制により、宅経済(巣ごもり消費)が開花し、「非接触型販売」である、オンラインへの依存が更に進行し、上半期の防疫期間では、オンライン教育、ライブコマースなど、ライブ配信は全盛を迎えたと言えるほどである。
ライブコマースの「主播」に関して、かつてはインフルエンサーや生主等が主流であったが、今年に入って以降、PF各社はその他のKOLや芸能人、有名人などを積極的に起用し始めた。
中国は非常に厳しい防疫体制を取っているため、春節後かなりの期間に渡って、ドラマ、映画、バラエティなどの撮影が全てストップしてしまった。仕事がなくなった芸能人にとって、ライブコマースはまさに最適な“転職先”となり、かつてはテレビ販売のオンライン版として見下されていたものが、現在芸能人が相次いでデビューを果たしたことで、2020年は芸能人によるライブコマース元年になると言われている。例えば、女優の劉涛(リウ・タオ)はライブコマース初参戦にも関わらず、4時間で売り上げ1.48億元(約24.7億円)を記録し、視聴者数は2100万人に達した。その他、ヤン・ミー(楊冪)やリウ・シーシー(劉詩詩)、人気アイドルのルハン(鹿晗)やクリス(呉亦凡/ウー・イーファン)、国営テレビCCTVの人気キャスターまでもが続々とライブコマースデビューをしている。
KOL、インフルエンサー、芸能人などのすでにファン基盤のある人は生主に“転職”しやすいが、そうでなかったとしても、現在多くの企業家、有名人、公務員までもが生主としての副業を始めている。
コロナウィルスにより衝撃を受けた経済を復帰させ、ライブコマースに熱中しているユーザーの目を引くために、多くの企業家たちも生主デビューを果たした。例えば、最も話題性のある創業者羅永浩(ルォ・ヨンハオ)氏、電気大手格力(Glee)のCEO董明珠(ドン・ミンジュ)氏、旅行大手の携程(シートリップ)の創業者梁建章(ジェームズ・リャン)氏、IT大手網易(NetEase)のCEO丁磊(ディン・レイ)、防疫指揮者として国民の信頼を集めた鐘南山(ジョン・ナンシャン)氏まで、貴州省の農産品販売支援のため、ライブコマースに登場した。
アリババの馬雲(ジャック・マー)氏も自社のライブコマースに出場し、李佳琦と「中国で一番売れる男」を競い、完敗を喫した。それ他にも、地方の農業や経済を回すために、公務員から市長までライブコマースに進出した。ある地方の裁判官が1時間のオンライン司法オークションで売上1億元を達成したといったこともニュースに報道された。
まとめ
今回まとめたように、ライブコマースはロケットなど正に“何でも売ること”ができ、国民のライフスタイルに大きな影響を与えた。去年から映画チケットの販売や、ドラマのリリース宣伝などもライブコマースで行うことが増えている。以前紹介したドラマ『慶余年』の主演達も放送最中に李佳琦のライブに登場し、作品のプロモーションを実施している。
現在ライブコマースは国民の大半が夢中になるPFとして、映画やドラマなどの宣伝の舞台としても重要な位置を占めている。中国ビジネスを展開している日本企業でも、いち早く中国ライブコマース市場に、参入することで新たなチャンスを得られるかもしれない。